難問奇問数学自作問題82-ペル方程式という名前は誤解で生まれた-

「以下の問いに答えよ。

(1)  { \displaystyle m,n,a,b}自然数とし、 { \displaystyle a_1=a,b_1=b} として { \displaystyle a_{n+1}=a a_n+mb b_n,b_{n+1}=ba_n+ab_n} により数列を定義する。このとき、 { \displaystyle a_n\pm b_n\sqrt{m}=(a\pm b\sqrt{m})^n} が成り立つことを示せ。また、 { \displaystyle (x,y)=(a,b)} が方程式  { \displaystyle x^2-my^2=1}の解となるとき、  { \displaystyle (x,y)=(a_n,b_n)} もその式の自然数解になることを示せ。 

(2)  { \displaystyle l}自然数とするとき、方程式 { \displaystyle x^2-l(l+1)y^2=1}自然数 { \displaystyle (x,y)}を2つ求めよ。」

 

 ペル方程式  {\displaystyle x^2-my^2=1} に関する問題。(1)は帰納法を使えばそんなに難しくは無い。同問の結果は、「一つでも特殊解が見つかれば、そこからいくらでも違う解を作り出せる」ということ。なので、(2)では如何に特殊解が求まるかがカギとなる。

 以下、(2)の特殊解を求めてみよう。 { \displaystyle x^2-l(l+1)y^2=1} { \displaystyle l}についての二次方程式とみなすと、判別式は

         { \displaystyle D=(y^2)^2+4(x^2-1)y^2=y^2(4x^2+y^2-4)}

となる。これが平方数になっている必要があるため、 { \displaystyle 4x^2+y^2-4}が平方数になる場合を考えれば良い。特別な場合として、 {\displaystyle y=2}とすると明らかに平方数になることがわかる。この時の  {\displaystyle x} は方程式に代入することで {\displaystyle x=(2m+1)} となるため、解の一つになっている。あとは、(1)の結果より、違う解を一つ生成すれば良い。

 

 こっからは完全に余談。本問で扱った方程式はペル方程式と呼ばれているが、実はその名前は誤解で生まれたものであるらしい。伝説の数学者オイラーが、「この方程式を研究したのはペルだ!」と早とちりしてしまい、この名前になったそう。実際は、ウィリアム・ブラウンカーという数学者が一般的な解法を導いており、こちらの名前を採用すべきであった。かわいそう。