難問奇問数学自作問題24-呑んだ暮れの冒険(拡散と漸化式)-

「正六角形を6つの正三角形に等分割してできた小部屋を、左周りにA、B、C、D、E、Fとする。泥酔した宿泊客が、1分ごとに隣り合う小部屋に移動する、ないし現在の部屋にとどまる選択をするとする。このとき、右隣に移動する確率、左隣に移動する確率、とどまる確率は全て等しいとする。この客は最初にAにいるとして、 { \displaystyle n} 分後にDの部屋にいる確率を求めよ。」

 

考え方のポイントは、 

① 対称性を利用

② 複数の漸化式から簡単な関係式を導く

の2つである。

解答の流れを説明する。

まずポイント①より、 { \displaystyle n} 分後に小部屋Bにいる確率とFにいる確率は等しく、小部屋Cにいる確率とEにいる確率も等しい。これにより、考えるべき数列は、4つの種類のみとなる。以下、例えばA、B、C、D、E、Fにいる確率をそれぞれ  { \displaystyle A_n, B_n, C_n, D_n,C_n,B_n,}とおく。これらについて漸化式を求める。

次に②のポイントでは、 { \displaystyle A_n, D_n} の関係を漸化式から導き出す。例えば、 { \displaystyle A_n+D_n} はかなりシンプルな式を満足することが証明できる。また、  { \displaystyle A_n-D_n} についても、うまく3項間の漸化式に持っていくことが可能である。

 以上の解き方は、前問の積分方程式のそれにかなり近いことがわかる。

suugaku-daigakunyuushi-inshi.hatenablog.com

 

また、この問題は「拡散現象」のシンプルなモデルにもなっている。拡散とは、コーヒーにミルクを入れて均一に交わっていく現象であり、エントロピーの増大則と密接な関係をもつ。過去の紹介記事

suugaku-daigakunyuushi-inshi.hatenablog.com

 によれば、エントロピーが最大になるのは全確率が一様に等しくなる場合であった。今回の問題の結果から、十分時間が経つと泥酔客がどの部屋にいるかは確率  { \displaystyle 1/6} で一様に等しくなることがわかる。